義務教育の間にしっかりした性教育を

 

 
河野氏  

診療と講演の二重生活  私のクリニックは、広島市のビジネス街、繁華街の交通の便の良い所にあります。約20年の勤務医を経て、1990年の11月に開業致しました。診療は、木・日・祭日は休診。その他は土曜日も午後6時まで行っていますので、お勤めの人や学生さんは土曜日に集中します。休診日にはあちこち講演に出かけています。  

 

 

   
     
 

 
     
   
     
   
   
     
   
     
   

若い人、更年期の人、お年寄り、さまざまな人がやって来ます。しかし、勤務医の時代から性教育に取り組んでいたことは知られていますので、つらいことになった若い人がよく来ます。悪戦苦闘の毎日です。


社会人男性が妊娠の相手

 このシリーズの私の役目として、統計をあげましょう。私が開業して10年経った時点で初診時年齢が10代の人の統計を取りました。一人ひとりのカルテを引っ張り出し、パソコンにデータを打ち込んで一年かかりました。それらの統計の一部です。
 中学生の妊娠の相手は中学生か社会人。高校生の妊娠の相手は高校生か社会人なのです。女性は妊娠率の差はあまりありませんが、男性の妊娠(させた)率は中学・高校・大学・専門学校と段々と少なくなります。しかし、社会人となると中学生と高校生の間なのですね。
 私は、若者の性というと女性のことばかり言われるのが不満で、相手の男性をみなければいけないと思っています。これらの統計からも分かって戴けるでしょうか。若者の性の相手の男性のキーワードは「社会人」です。よく学生の間の性はダメなどと言いますが、社会に出るともう誰も教えてはくれません。だからこそ、学生の間に、それも義務教育の間にしっかり伝えておきたいと思うのです。


「いい子」ほど危ない

 もう一点。少々遊んでいる子とか、親にさんざん心配をかけている子はむしろ大丈夫。何かあったときに、親にSOSを求めたり、友達に付き添ってもらったりして産婦人科を受診することができます。それまで何ごともなく、いい子で来た子ほど危ない。親にも言えず一人抱え込んで悩み続け、やっと受診した時にはもう手遅れ。やむを得ず出産しなければならなくなって、でも育てることもできず……。そんな女性と生まれてきた子のための養子縁組のお世話はもう60人を超えました。

 


【略歴】 1947年広島県生まれ。72年広島大学医学部卒業。同大学産科婦人科学教室入局。81年総合病院勤務。85年「さらば悲しみの性」出版。以後出版は12冊に及ぶ。90年河野産婦人科クリニック開業。休診日には講演で全国に飛ぶ。