リレートークを始めるにあたって

日本家族計画協会クリニック所長北村 邦夫

 

「できたら近況報告に15分間ほどいただけませんか」。久しぶりに出席した慶愛病院(帯広市)の真井康博先生の声を遮るように、「今日の出席者の数からみても2分がいっぱいです」と。3月14日に主婦会館プラザエフで開催された「避妊教育ネットワーク第10回事例検討会」(写真上)の開会前のやりとりだ。

開会は12時だったが、当日の参加者は北海道から九州まで実に36人。いつものように熱気に満ちた議論が続いた。毎回、近況報告の時間をとるのだが、報告会は年2回しかないものだから、時間内で済むわけもなく、タイムキーパーを買って出ている筆者の「タイムオーバー」の声が場内に響き渡る。

「避妊や性感染症予防をテーマに性教育を依頼されることが増えたが経験も乏しく不安だ」との声が誰彼となく聞こえてきた。そんなことをきっかけに、比較的経験豊かな5人が世話人となって、「避妊教育セットワーク」が立ち上がった。2005年3月のことだ。当初は18都道府県からの26人の会員数に過ぎなかったが、今では33都道府県66人に跳ね上がった。

本紙では4月号から、「避妊教育ネットワーク」会員によるリレートークを連載することになった。会員の日頃の活躍ぶりを具体的に紹介していくことができればと願っている。

第1回目は、世話人の一人である筆者が、「避妊教育ネットワーク」設立の経緯と最近の活動内容などをまとめた。

 

設立の趣旨

各地域において、主として若年者に対する避妊指導に取り組んでいる医師が、地域ごとに異なる様々な事情(成功事例や問題点など)を議論し、また情報を共有し、それぞれのスキルアップを図ることを目的とする。

 

会員の資格

以下の要件を満たす医師個人

①地域で思春期に関する活動を積極的に行っている

②避妊教育、性感染症予防教育を積極的に行っている

③思春期女性に対して、避妊及び避妊以外の利点を目的として低用量経口避妊薬(OC)の処方を推奨している

④上記について、現在は行っていなくとも、今後活動を行う意志がある

⑤人工妊娠中絶を女性のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)として捉えている

 

具体的な活動内容

①メーリングリストを通じた会員間での日々の意見交換、情報の共有

②年2回の研究会(避妊教育事例検討会)の開催

③調査研究と学術集会における発表

 

「避妊教育ネットワーク」の活動として是非とも語らなければならないことがある。2008年11月、筆者が会長となって第49回日本母性衛生学会学術集会がシェラトン・グランデ・トーキョーベイホテルで開催されたことはまだ記憶に新しいことと思う。その会期中、ランチョンセミナーの一つとして「避妊教育ネットワーク」が活躍したのだ(写真下)。

思い思いの衣装でというのは失礼だが、女装あり、男女高校生役あり、看護師役あり。演じたのはすべてが医師なのだから、「医師役」というのも何だが、OCの魅力を大勢の参加者に知って欲しいと啓発劇を演じ続けた1時間。確かに評価は分かれたが、あのパワーがこのネットワークを支えている。

4月を迎える頃になると、入学などでの上京、あるいは地方大学への進学などがあるが、継続的に患者をサポートする際に役立つのがこのネットワークだ。「顔が見える医療機関への紹介」を謳い文句として紹介状が全国を行き来している姿は、想像するだけで心地よいものだ。

 

今年のメインイベント

本年8月1日に三重県で日本産婦人科医会性教育指導セミナーが開催されるが、その前日に、「避妊教育ネットワーク」主催で「今日から役立つ避妊教育」(仮題)をテーマにセミナーが行われる。会員による手作りのセミナーではあるが、参加者には驚くほどインパクトのある会になると確信している。

 

避妊教育ネットワーク会員(◎は世話人)

【北海道】

真井康博(慶愛病院)、

神藤已佳(エムズレディースクリニック)、

土橋義房(さくら女性クリニック)、

有馬和代(麻生レディースクリニック)、

塚田訓子(レディースクリニックぬまのはた)

【青森】

◎蓮尾豊(弘前女性クリニック)、

片桐清一(国立病院機構弘前病院)、

平岡友良(あおもり協立病院)

【岩手】

秋元義弘(岩手県立二戸病院)

【宮城】

北野原正高(きたのはら女性クリニック)

【山形】

井上聡子(さとこ女性クリニック)

【福島】

野口まゆみ(西口クリニック婦人科)、

阿部雪江(あべクリニック)

【茨城】

和田由香(いはらき思春期保健協会)

【群馬】

◎家坂清子(いえさか産婦人科医院)、

今井美和(ベルフィーユ今井レディースクリニック)、

倉澤剛太郎(西吾妻福祉病院)

【埼玉】

中山政美(ティアラ21女性クリニック)

【千葉】

八田真理子(聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田)、

柳堀厚(露仙堂クリニック)

【東京】

木村好秀(浜田病院)、

東哲徳(東クリニック)、

◎北村邦夫(日本家族計画協会クリニック)、

吉野一枝(よしの女性診療所)、

池上芳美(池上レディースクリニック)、

対馬ルリ子(ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック)、

須藤なほみ(虎ノ門病院)

【神奈川】

植田啓(ソレイユひまわりレディースクリニック)、

森理子(大和市立病院)

【長野】

渡邉智子(北信母性保護相談所、 丸山産婦人科医院)、

滝沢緑(滝沢医院)、

竹内はるか(飯田市立病院)

【山梨】

武者稚枝子(武者医院)

【静岡】

宮崎千恵子(宮崎クリニック)、

鎌田光一(かまたクリニック)

【愛知】

小栗明子(明子ウェルネス・クリニック)、

斉藤洋子(アルファクリニック)、

丹羽咲江(咲江レディスクリニック)

【富山】

◎佐竹紳一郎(さたけ産婦人科)、

種部恭子(女性クリニックWe富山)、

桑間直志(富山赤十字病院)、

飴谷由佳(富山県立中央病院)、

舌野靖(富山県立中央病院)

【石川】

田中良則(産婦人科田中医院)

【三重】

川村真奈美(三重県厚生農業協同組合連合会いなべ総合病院)、

西浦理佳(ザ・クリニック)

【滋賀】

髙橋健太郎(滋賀医科大学医学部附属病院)

【京都】

池田裕美枝(洛和会音羽病院)

【奈良】

甲村弘子(大阪樟蔭女子大学大学院)

【兵庫】

阿部紋(阿部レディースクリニック)、

阿部善継(阿部レディースクリニック)

【岡山】

上村茂仁(ウイメンズクリニックかみむら)、

太田郁子(倉敷平成病院)

【広島】

◎河野美代子(河野産婦人科クリニック)、

山本雅子(西条ときわクリニック)

【山口】

金子法子(針間産婦人科)

【徳島】

河野美香(河野美香レディースクリニック)

【大分】

貞永明美(貞永産婦人科)、

谷口久枝(やぐちレディースクリニック)

【佐賀】

大隈良成(大隈レディースクリニック)

【長崎】

安日泰子(やすひウィメンズヘルスクリニック)

【熊本】

池田景子(池田クリニック)

【宮崎】

秦博子(はた産婦人科)

【鹿児島】

昇晃司(産科・婦人科のぼり病院)

【海外】

岡村麻子(元・日立総合病院※北京)、

金子さおり(元・名古屋市立大学産婦人科※上海)

(2010年3月14日現在)