地域のすべての公立高校で性教育講演

あおもり協立病院(青森市) 平岡 友良

 

 

 

弘前大学産婦人科教室入局時に社会医学

外来風景私は1981年弘前大学産婦人科教室に入局し、当時主任教授の品川先生の下で診療や研究を行いました。「妊娠・分娩と妊婦の職業」というテーマをもらい、調査したところ、専業主婦に比較して勤労妊婦や自営業従事妊婦の方が早産や低出生体重児の出現頻度が高いという結果が出ました。大学時代に産婦人科と社会医学の密接な関連があることを学びました。

 

性教育デビュー

1994年から青森に移ったところ、大学の先輩から「この地域の性教育を担当してくれないか」と依頼されました。青森県は1981年より各教育委員会に産婦人科校医を配置し、性教育や相談活動を行っています。私は1996年から青森市及び東津軽郡の高校を中心とした性教育を担当しています。

 

現実の性教育講

各学校から依頼されるのは、年1回の1時間程度の講演会形式の性教育です。この程度でどれくらいの教育効果があるのかは疑問ですが、高校生活で1時間でもこのような機会があり、出会いがあることは重要と思われます。幸い、青森県ではバッシングもなく、各学校の養護教諭の理解もあります。かなり欲張った内容の講演を行い、最後にメール相談のアドレスを伝えています。私がこの地域で始め、10年間たってやっと地域の公立高校全て(といっても10数校なのですが)に毎年行けるようになりました。濃密な内容の性教育を限られた対象に行うことも重要ですが、同じ内容で全ての公立高校に継続的に行うことは、地域の思春期保健にとって重要な影響を及ぼすと思われます。

 

「オトナになれない若者」

思春期は子どもから大人へ向かう過渡期です。思春期にクリアするべき課題として①自分の性を認める、②自立する、③他人との関係性を作ることができる。この3つを伝えています。特に、最近、「自立」は達成困難な課題となってきています。就職と結婚は自立を実感する重要な要素ですが、非正規雇用では自立できるだけの収入を得ることができません。非婚化、晩婚化によって「結婚できない若者」が増えてきています。大人になれない若者、自己愛が強く他罰的な若者、他者とのコミュニケーションがとれない若者も増加しています。若者が夢や希望を持つことが困難な時代となっているのではないでしょうか。親とは違う時代を生きている若者たちを支えていくためにはこの状況を大人たちが理解することが大切だと考えています。


思春期研究会

2006年5月に思春期の子どもたちに関わる人たちが一堂に集まり、学習を行いスキルアップできる場として「あおもり思春期研究会」を発足しました。さらに、最近ではチャイルドラインや児相研究会、男女共同参画の会などの団体とも交流しています。若者が生きづらい時代だからこそ地域の中で思春期の子どもたちを支えるネットワークを作っていきたいと考えています。


【略歴】

1956年埼玉県生まれ。1981年弘前大学医学部卒、同年弘前大学産科婦人科学教室入局。津軽保健生協健生病院等を経て1994年5月より現職。日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本更年期学会会員、日本思春期学会評議員、日本母性衛生学会評議員、あおもり思春期研究会会長。1995年より県立青森西高校校医、東青地域(青森市、東津軽郡)の高校を中心に性教育を担当している。