ネットワークでつながる大切さ

やぐちレディースクリニック(大分県佐伯市) 谷口 久枝

 

 

 

県民公開講座での避妊教育ネットワークの活躍

県民公開講座の寸劇2011年7月30日、大分県別府市において、第34回日本産婦人科医会性教育指導セミナー全国大会の前日に、県民公開講座「医師による親子のための性教育」(避妊教育ネットワーク、大分県産婦人科医会共催)が開催されました。第一部の「若い女性にしのびよる子宮頸がん がん検診かワクチンか」熊本大学産科婦人科学講座教授の片渕秀隆先生の講演に引き続き、第二部では、「児童虐待防止は〝望まない妊娠〟の防止から~避妊の大切さを考えよう~」をテーマに、まずは北村邦夫先生の会場の高校生に熱く、熱く語りかける講演。それに引き続き、産婦人科医が日常的に目にしている、高校生が妊娠した時にくりひろげられる光景を再現した寸劇と渡邉智子先生の教育入院のお話。そして九州の安日泰子先生、大隈良成先生による、地域の実態と性教育の実際。

「女性だけでなく男性もしっかりと考えていかなければならないと思った」(10代男・学生)。

会場にいた多くの高校生が、決してドラマの中や他人事ではなく、自分の事として考えたのではないかと思います。さらに、「とてもすばらしい講座でした。私達は看護師になります。私達が今度は様々な人に広めていかなければならない情報であると考えます」。人と人とがつながろうとする意欲を高めた講演だったと思います。


性に関する教育関連専門委員会の設置

思春期の生と性教育翌日の性教育指導セミナーでは、佛教大学教授の若尾典子先生が「私の身体/私の気持ち?性的自己決定権を考える」というタイトルで特別講演を担当されましたが、憲法学者ならではの大変示唆に富んだ内容でした。引き続き、貞永明美先生が企画されたワークショップ「地域をつなぐ性教育」では養護教諭、教育委員会の保健師、看護大学准教授が講演されました。午後は性暴力への取り組みを各方面から考えるシンポジウムでした。医師だけでなく、助産師、保健師、PTAや養護教諭を中心とした学校関係者、さらに警察など多くの職種の方々の発表があり、ワークショップ、シンポジウムを通して、違った立場でつながることの大切さを改めて感じることができました。もちろん、多くの方々のご協力あっての成功ですが、ネットワークメンバーの貞永実行委員長の、10年以上に渡って築き上げた深く、幅広いつながりが、成功につながったものと確信しています。

また、今回の大会を契機として、大分県地域保健協議会学校保健小委員会に、「性に関する教育関連専門委員会」を設置することとなりました。昨年の三重大会においても、大会後に、県主催の大規模な思春期セミナーを開くことになったとききます。性教育指導セミナーがきっかけとなり各地で少しずつ、確実に性教育の輪が広がっています。

 

私の中のつながり

2003年、第26回性教育指導セミナーにおいて蓮尾豊先生の模擬授業を拝聴したことが、私の性教育の原点です。その後、性教育に関心の高い土地柄、先生方や保護者の皆様に恵まれ、徐々に性教育を行う機会が増えていきました。「避妊教育ネットワーク」にも加えていただきました。

その中で、性教育は、単に、性感染症や避妊に関する知識を提供するだけではなく、自分と相手の人権を大切にした「人と人との関係性」を育むことも大きな柱のひとつであることに気づかされました。上村茂仁先生などからご教示いただいたデートDV防止教育や、NOと言える自己肯定感やコミュニケーション能力を育てることも大切です。それらは1回の講演会で完結するものではありません。学校現場の先生方にその必要性をわかっていただき、連携をとりながら、日々取り組む事が大切であると思います。

その後、吉野一枝先生を通してPCM(パーソナルコミュニケーションメソッド)に出会い、自分を知り、自分に合ったストレスマネージメント法を見つける事ができました。さらに、ネットワークの会で仲間の先生方の熱意や優しさに触れて元気をいただく、ということも燃え尽きないコツです。

最後に、2011年5月に、佐伯市教育委員会教育委員に任命されました。今後、医療と行政、教育現場をつなぐ役割を担いたいと思っています。

 

【略歴】

宮崎県出身。熊本大学医学部卒業。宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)大学院修了。大分市医師会立アルメイダ病院、宮崎県立延岡病院、安武病院勤務を経て、1999年より大分県佐伯市にて開業。2011年5月より佐伯市教育委員会教育委員。