<13> 神奈川と信州で、OCの魅力を伝え続けたい ― ひまわりレディースクリニック院長 植田 啓 (2011.04)
神奈川と信州で、OCの魅力を伝え続けたい
ひまわりレディースクリニック院長 植田 啓
当院はクリニックビルの5階にあり、低用量経口避妊薬(OC)処方はもちろんのこと、ホルモン補充療法(HRT)を主とした更年期医療、骨粗鬆症、漢方、禁煙治療などに力をいれて診療しています。ビル6階には「助産院レディースサロンひまわり」を併設、母乳・育児相談などを行っています。火~土曜日は横浜の自院で診療、月曜日は長野県松本市で女性外来、毎週横浜と信州の往復を続けて8年になります。
思春期関係の活動としては、神奈川県産科婦人科医会主催の学習講演会(学校関係者対象に年1回実施)の企画運営に携わり、今年で3回目となります。また、長野県では2006年に「思春期ネット」を有志で発足、年2回の学習会を続けています。このように元気に活動ができるのもOCのおかげであり、OC普及活動は私に与えられた使命だと思っています。
OC普及活動のきっかけ
私自身が子宮内膜症と続発性不妊症の患者で、その苦しさから救ってくれたのがOCでした。子宮内膜症は、痛みによるQOLの低下ばかりでなく、不妊症の原因となり、子宮内膜症性卵巣嚢胞(チョコレート嚢胞)はがん化する危険性があります。OCが子宮内膜症の治療薬として効果があるというのは今では当たり前のことですが、一昔前はそうではありませんでした。治療目的にOCを処方しても、「そんなの効くはずない」と他院で言われて中断してしまう患者さんもいて、その度にやるせない思いをしました。それでも、子宮内膜症や不妊症で苦しむ女性を少しでも減らしたいという思いからOC処方を行ってきました。
避妊は女性を自由にする
私が実感したOC効果は、チョコレート嚢胞の縮小や痛みからの解放だけではありません。続発性不妊で検査や治療をしていた頃、いつ妊娠するかわからないので新しい活動にチャレンジできませんでした。でも、月経痛は容赦なく毎月襲ってきます。OCを服用することによって第二子の妊娠は諦めざるを得ませんでしたが、「妊娠をしない(=避妊)」という選択がこんなにも身も心も自由にさせてくれるとは思いませんでした。幸いにも私たち夫婦には子どもが一人いたので結論を出すのは比較的容易だったかもしれませんが、子どもがいなくてもOC服用を決断するカップルもいます。そこには様々な事情があるわけですが、女性を支える素敵なパートナーの存在を感じると、とことん二人の人生を応援したくなります。
人と人の繋がりを大切に
女性が幸せに生きるためには男性の協力も必要です。たまたま3年前に高校同窓会で講演をする機会がありました。ほとんどが男性で、しかも私より一回りも二回りも年輩の先輩方が大半で大変緊張しましたが、OCや性のことをどうしても伝えたくて話の中に入れました。有難いことに多くの方が真摯に耳を傾けてくださいました。この経験が自信となり、思春期や女性に限定することなく活動をしていきたいと思うようになりました。ちょうど今年はHPVワクチンの公費助成が各地で始まり、活動を広げるチャンス!大切にしたいのは人と人の繋がりです。
継続は力なり
「思春期ネット」も繋がりの中から生まれました。今年5周年を迎えます。性教育や思春期に関する学習会は準備会の2年間を入れると14回開催したことになります。ニュースレターも№10を発行、まだ5年ですがよくぞここまで続けてきたと感慨深いものがあります。発起人は7人、それぞれ仕事と家庭で忙しく、地道に学習会を積み重ねていくことで精一杯でした。それでも「学習」は活動の糧であり、とかく孤独になりがちな性教育に携わる会員には励みになっていたと思います。
とにかく継続は力なり、これからも仲間とともに活動を続けていきたいと思います。
【略歴】
1962年長野市出身。1989年信州大学医学部卒。甲府共立病院、相模原協同病院などに勤務。2006年松本協立病院に女性外来(更年期外来)開設、2007年より現職。神奈川県産科婦人科医会学校医委員会委員、思春期ネット会長、松本短期大学非常勤講師。