「運命の人」たちとの出会い

齋藤氏アルファクリニック(愛知県春日井市) 齋藤 洋子

 

 

プラスアルファを求めて

開業して、昨年で20年になりました。開業時は、婦人科をなかなか受診出来ない方のために、来院しやすいクリニックをめざす事を第一目的にしました。

愛知県警から表彰そのため「産婦人科」とは名付けず、しかもその頃はやり出した「レディス」「ウイメンズ」も採用せず「アルファクリニック」という、得体の知れない名前にしました。さらに、標榜も婦人科・内科とし、途中から妊婦検診も中絶もしませんというアナウンスもしました。  今でもクリニックの名前の由来を聞かれますが、患者さんが、何かのプラスアルファを感じてお帰りになるといいな、と考えてつけたものです。案の定、開業当時から現在まで、更年期の方と、思春期の方が、大半を占めています。

 そんなときに、お隣で開業されている小栗明子先生から、「避妊教育ネットワークに参加してみない?」と誘われ、第2回目の会議から、お仲間に入れていただきました。


情熱を持ってOCを処方

 そこで私は「運命の人」たちに出会いました。  先日テレビで放映されていた「運命の人」……この人に出会って、私の運命は変わった……という、まさにその通りの場面が私の眼の前に開かれました。  その「運命の人」たちとは、北村邦夫先生を始めとする避妊教育ネットワークのメンバーの方々です。事例検討会での熱い語らい、その後の情報交換会……。地元で、孤独に開業していた私にとって、全国に同じ仲間がいる事を知りました。  それまでOCは普通に処方していました。事例検討会で夢のような1日を過ごした私は、翌日から、鬼のように(?)来院される方に熱い情熱を持ってOCを語り、説き、処方し、1年後の事例検討会では、OC処方数が数倍になった事を報告できるようになりました。

 

愛知・思春期研究会設立

 2008年から、日本女医会の子育て支援委員会の中のゆいネット委員会で、「十代の性の健康」支援ネットワーク作り事業が始まりました。 この事業の2年目から、丹羽咲江先生が加わり、3年目には、私も参加させていただき、実に多くの人が、「十代の性の健康」に関わっていることを知って、大変有意義な経験になりました。 この事業は、昨年で終了しましたが、せっかく作ったネットワークを大事にしたいという思いが膨らみ、三重の川村真奈美先生、名古屋の丹羽咲江先生と協力して、自分たちで活動の輪を広げ、精神科の医師、高校の保健体育の教師とコラボして愛知・思春期研究会を立ち上げました。  性教育を行って欲しいという希望はどこの学校にもあるのですが、なかなか自分たちの要望にあった話をしてくれる人がいない、なんとかして欲しい、という要望も多く、彼らの期待にぜひ応えたいと思っています。

性犯罪被害者の支援

数年前、地元の警察から、性犯罪被害を受けた小学校6年生の女子の診察を依頼されました。付き添ってきた警察官はとても彼女を気遣ってくれていました。その子は、実父からレイプされ続けていたのですが、ふとした家族間の会話の中でそれが発覚し、家族(もちろん実父を除く)で一大決心をして、実父を訴えることになったのです。

市民健康づくり講座講演 その後、検察側の証人を引き受けて裁判に出たり、愛知県警主催の安全フォーラムで性暴力の講演をしたり、愛知県警といろいろなつながりを持つことができました。その活動で、一昨年、昨年と、愛知県警から表彰状をいただきました。

 愛知県には、現在日本でただ一つの、「警察が作った」性犯罪被害者のためのワンストップセンターがあります。ワンストップセンター開設の動きが全国に広がってくれることを期待しております。  また、今年度より、地元の産婦人科医会の会長を拝命し、医師会や行政とも、つながりが深くなりました。今後はもっと研鑽し、リプロダクティブ・ヘルス/ライツを広めていきたいと考えております。


【略歴】

1956年名古屋生まれ。1983年山形大学医学部卒業。社会保険中京病院、名古屋大学医学部附属病院、国保南多摩病院勤務の後、1991年10月、愛知県春日井市において、アルファクリニックを開設。2011年度より、春日井市産婦人科医会会長。愛知・思春期研究会会員。